オフショア開発で円滑なコミュニケーションを取る方法 

1.はじめに

 昨今新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響を受け、社会全体で急激にテレワークが促進し、今まで当たり前だった働き方が一変しました。このような状況下において、強く問題視されているのは「コミュニケーションの取り方」です。

対面で気軽に会うことができない今、チャットやメール、電話、オンライン会議等でコミュニケーションを取っているかと思われますが、誤解を招くことをなく円滑なコミュニケーションを取れていますでしょうか?

 

 今回は、かねてより私が取り組んできた、オフショア企業とのコミュニケーションの取り方から、業務を円滑に回す方法についてお話しします。このブログを通して、Withコロナ時代に実際に人と対面で話すことが出来なくとも、問題なく業務を遂行するためのヒントとなれば幸いです。

 

2. 私の作業環境について

 現在、私は開発部に所属しており、保守部から連携される基本設計書関連を元に、詳細設計・製造・単体試験までの工程においての管理やレビューを担当しています。
詳細設計、製造、単体試験の実作業は、オフショア企業(中国企業)へ委託しており、私の主な作業は、指示・進捗管理・成果物のレビュー・課題の補助(保守部への質問等)を行っています。

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3. オフショア開発についての一般知識

3-1.メリット

オフショア開発をするにあたってあげられるメリットは下記3点あげられます。

・開発コスト削減

・利益の拡大

・国内の人手不足を補う為のリソース調達


3-2.現状と動向

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調べでは、日本IT企業の約45.6%がオフショア開発を導入済みであるとの調査結果が出ており、今後もその導入率は高まって行くと予想されています。今までは大手企業のみがオフショア開発を導入すると言われていましたが、最近では中小企業でのオフショア開発の導入も増加の傾向にあります。


3-3.オフショア先の対象国

日本でのオフショア開発先の比率は、

1位:中国

2位:ベトナム

3位:インド

4位:フィリピン

と続いています。


 中国に関しては、人件費の急激な上昇によるコストメリットの減少と、日中間の政治的緊張の高まりに起因して、2009年の84.9%から2010年の78.1%へと減少傾向にあります(それでも首位はキープ)。

中国のオフショア開発の特徴としては、基幹系システムや情報系システムなどのソフトウェア開発が最も多く、次いでWEBシステム開発などが行われています。


3-4.オフショア開発の必須条件

 オフショア開発には、優秀なブリッジSEの確保と業務遂行の環境構築が必須となっています。こちらは、導入する企業側が担う範疇です。私の現環境では、オフショア開発に10年程の歴史があり、どちらも整っている状況です。

4. オフショア開発の配慮点

 現場目線で配慮している点について、下記に記載したいと思います。(こちらはオフショア開発に限らず、国内での開発にも当てはめられる内容も含まれます)


4-1.文章でのコミュニケーションについて

 直接会話する機会が少なく、文章での伝達が主となることと言語の壁があることを考慮して、的確で無駄の無い内容を解りやすく伝える必要があります。

具体的例を下記に記します。

 

  1.  一番伝えたいことは、最初に伝える。
  2.  長文は避け、箇条書きや具体例を取り入れる。
  3.  文章だけでは伝わりにくいと判断した場合は、図や表などの資料も添える。
  4.  内容的な分類が複数となる場合は、<依頼><指摘><質問>等の見出しをつける。
  5.  カタカナ英語や擬音、擬態語を避ける。
  6.  伝わりにくいと判断した場合は、()で補足したり、注釈(※)を添える。
  7.  必要に応じて、背景や理由も伝達する。※オフショア開発でよく聞くことのある「依頼したこと意外はやってくれない」という事態を避けることにも繋がります。
  8.  漢字を多用する(相手国が中国の場合に限ります)
  9.  メールの往復数を減らすことを考慮した記載を行う。※これはオフショア側にも意識して頂く必要があり、その働きかけが必要となります。


4-2.会話でのコミュニケーションについて

 今回の私の場合は、WEB会議でのミーティングでのお話しとなります。具体的例を下記に記します。

 

  1. ゆっくり、大きい声で話す。
  2. 相手の反応を見ながら話しを進める。
  3. 質問の機会が最後だけだと、質問の精度が落ちてしまう為、ある程度区切ったところで確認を挟む。 例)「ここまでは理解できましたか?」
  4. 会議等では、議事録を記載し、認識齟齬がないことの確認を行う。


4-3.進捗管理、タスク管理、効率化について

① 相手先ブリッジの特性や資質を理解した上で依頼を出す

「半年~1年程、一定の期間作業を共にした後で」という前提となります。
ブリッジSEが複数いると、作業実績、得意分野、言語理解力にもムラが現れることがあります。


② タスク管理ツールの利用

複数プロジェクトを同時に進める場合は、私(1) に対して、オフショアブリッジSE(複数)を相手にすることになります。また、単一プロジェクトでも、タスク数が多い場合もタスクが埋もれる懸念があります。
今、誰がどのタスクを持っているか? 残りのタスクには何があるか?等を可視化できるツールの使用は必須と考えます。
参考)プロジェクト管理ツールの代表例:Redmine 、Backlog


③ 振り返りの実施

ある一定のプロジェクトの完了後に振返りの会を催し、お互いの改善点や反省点を挙げて、次回プロジェクトの改善に繋げます。

開発中では伝える機会の無い提案事項等も、ここでなら伝達しやすいです。日本/オフショアの双方が譲れない部分もあるので、お互いにメリットありと納得した施策についてのみ、次回のプロジェクトへ適用することが望ましいと考えます。

 

④ 手順書の作成

何度か繰り返される比較的複雑なタスクについては、手順書を作成することで、全体的な効率を上げることが可能な場合があります。
これに対して、手順書が乱立すると探すのに苦労したり、埋もれてしまう場合もあるので、管理方法と継続したメンテナンスにも配慮する必要があります。

5.さいごに

 在宅勤務が増えている中、会議や作業中のコミュニケーションが直接での対話方式から、オンラインでの対話方式へと変化し、文章での的確な伝達が要求されています。
オフショア開発に限らず、読み手がわかり易い文章、認識齟齬が発生しないような考慮、円滑なコミュニケーションが重要だと感じています。今回の記事がコミュニケーションの促進や改善の一手となれば幸いです。

 

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