はじめまして。資産運用開発課のTです。
主に投資信託に関するシステムに関わっております。
今回は投資信託(以下、ファンド)の運用に欠かせない知識の一つである余裕資金の運用先、コール・ローンについてご説明します。
1.短期金融市場・コール・ローンについて
◎ファンドが利用する短期金融市場について
ファンドは主にコール・ローンによる運用を行っていますので、当記事ではコール・ローンに焦点を当てて説明していきます。
※なお、短期金融市場で代表的なものには、コール・ローン、コマーシャルペーパー、譲渡性預金、債券レポ取引等があります。
◎コール・ローンとは
コール市場における資金の貸し手側の取引です。
コール市場とは金融機関同士が短期資金の貸し借りを行う市場です。
◎代表的なコール・ローンの種類
取引条件ごとに複数の種類があります。
ファンドの運用では、ほとんどの場合オーバーナイトコールが使われます。
・オーバーナイト
無担保コールで当日が約定日、当日が受渡、翌営業日を資金決済日とする取引
・トムネ
当日が約定日、翌営業日が受渡、その翌営業日を資金決済日とする取引
・スポネ
当日が約定日、翌々営業日が受渡、その翌営業日を資金決済日とする取引
・期日物
取引期間が2営業日以上の取引
・有担保コール
担保付のコール取引
・無担保コール
担保が付かないコール取引
◎コール・ローンの参加者
資金の貸し手⇒短資会社(仲介)⇒資金の取り手(借り手)となっており、ファンドは資金の貸し手となります。
◎短資会社とは
コール資金の貸借、仲介を行う金融業者です。他にも為替の仲介やコマーシャルペーパーの売買や仲介を行います。
◎コール・ローンの利息
資金を貸すことで借り手から利息を受け取ります。利息は元金に日数とレートを掛けたものとなります。ここでいうレートをコールレートと呼びます。
◎取引単位について
放出単位は100万円単位、ファンドの余裕資金を複数のファンドからかき集めて短資会社を介して放出します。
ファンドA:1000000000円
ファンドB:2000000000円
ファンドC:3000300000円
コール・ローンに放出する額:6000000000円 端数:300000円
◎コール・ローンで運用できない端数について
前述の例の端数に当たる部分はコール・ローンの取引単位未満なので、コール・ローンに放出できません。
受託銀行(ファンドの運用会社の指示で資産の管理・保管を行う信託銀行)の金銭信託に預け、利息を得ます。(または受託銀行の当座預金に預金として預けます)
◎マイナス金利の影響
日銀がマイナス金利政策をとるようになったことで、現在のコールレートはマイナスになっています。受託銀行の金銭信託についても同様で、預けただけで利息が取られます。
余裕資金を運用しようとして損をしては本末転倒です。そこで、現在では他の短期金融市場が利用されることもあります。
例)CD(譲渡性預金)、CP(コマーシャルペーパー)、国庫短期証券、債券現債取引、債券
2.さいごに
今回はファンドの余裕資金の運用先、主にコール・ローンについてご紹介しました。
システム開発をするにあたって、単にシステムを開発するための知識を持っていればいいというわけではなく、その業務に関する知識も持っている必要があります。
本記事を通して多少でも興味を持っていただける方がいらっしゃったら幸いです。
なお、利息がファンドの収益となるのですが、日銀のマイナス金利政策により現在ではコール・ローンの貸し手となった場合、利息をもらうのではなく利息を払わなければならなくなりました。この場合でもファンドの運用上、コール・ローンの貸し手としてコール市場に資金を放出することもありますので、ファンドの純資産が目減りすることになります。この影響で短期金融市場を主な投資先としていたMMF(マネーマーケットファンド)のようなファンドは相次いで償還(ファンドを解消して資金を投資家に返すこと)してしまいました。
また、余裕資金の端数の運用先としている金銭信託の利息についてもマイナス金利の影響を受けており、現在では利息を払わなければなりません。
受託銀行が金銭信託として集めた資金は日銀の当座預金に預けるため、そこで受託銀行が日銀に利息を払うのですが、その利息が金銭信託の手数料としてファンドに転嫁される為です。
というわけで、投資先と言いつつ、マイナス金利政策の影響で損失を受けていることもあります。ファンドがどのような余裕資金の運用を行っているかは目論見書を見ればわかりますので、購入しようとしているファンドの目論見書を確認してみると良いかもしれません。
また、コール・ローンについては短資会社のHPに詳しい解説が記載されています。
日銀のマイナス金利政策による影響についても記載されていますので、興味がある方はぜひ訪れてみてください。
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