投資信託に関するインボイス制度

皆さん、はじめまして。資産運用システム開発課のXです。投資信託に関するシステム開発に関わっています。

今回は巷で噂になっている「インボイス制度」において、投信業務ではどのような対応を行っているのかについて説明したいと思います。

 

 

1.インボイス制度の概要

2023年10月1日(日)からインボイス制度が開始されます。

インボイス(適格請求書)

売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」*1に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

 

インボイス制度

<売手側>
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)

<買手側>
買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス*2の保存等が必要となります。

 

消費税とは

  • 商品、製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課される税です。
  • 最終的に商品等を消費し、又はサービスの提供を受ける消費者が負担し、事業者が納付します。

 

(消費税の流れ)

引用元:国税庁 適格請求書保存方式の概要

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

 

2.投信業務から見たインボイス制度の対応について

  • 投信業務においては、固有の業務フロー*3とそれに伴う課題*4へのインボイス制度対応のため、投資信託協会指導の下、システムベンダーも参画した上で検討を進めてきました。
  • 投信業務での各種費用の流れ、買手/売手の関係は下記の図のようになります。

 

(費用の流れ)

 

  • 各種費用について、買手(運用会社、ファンド)が仕入税額控除の適用を受けるために、インボイス証憑が必要となります。

 

3.インボイス制度の投信業務におけるシステム対応範囲

対象となるもの

投信計理に係る「委託者報酬」、「代行手数料」、「受託者報酬」の各費用

信託報酬

受益者(投資家)が信託財産から間接的に負担する費用のこと。運用会社、販売会社、受託会社がそれぞれの業務に対する報酬として受取ります。(受益者(投資家)が投資信託を保有している間に負担する「費用」で、日々、信託財産から支払われます。)

委託者報酬

運用会社(委託会社)へ配分される信託報酬のことで、運用の対価として受け取ります。

代行手数料

運用会社(委託会社)が受け取る「委託者報酬」から、販売会社に分配金支払い等のための「事務代行手数料」として支払われます。

受託者報酬

受託会社へ配分される信託報酬のことで、信託財産の保管・管理の対価として受け取ります。 

 

対象外となるもの

投信計理に係る「監査費用」、「その他ファンドの支弁費用」の各費用

※投信協会から案内あり

 

システム対応について

代行手数料

買手(運用会社)が「仕入明細書」を作成・保存し、売手(販売会社)へ交付。

運用会社のシステムで対応を行います。

委託者報酬

売手(運用会社)が「適格請求書」を作成・保存し、買手(受託会社)へ交付。

買手(受託銀行)が「適格請求書」を保存。

運用会社のシステムで対応を行います。

受託者報酬

受託銀行内の売手(ファンド勘定)と買手(受託銀行勘定)間で「適格請求書」または「仕入明細書」を作成・交付・保存。

⇒受託銀行のシステムで対応を行います。

 

運用会社のシステム対応内容

※受託会社のシステムに関しては当ブログでは割愛します。

仕入明細書

売手(販売会社)への交付用帳票を新設します。

  • 要件①:売手(販売会社)の適格請求書発行事業者登録番号を記載します。
  • 要件②:税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)、適用税率、税率ごとに区分した消費税率を記載します。
  • 要件③:販売会社、ファンドごとに1ページの帳票として作成します。
  • 要件④:売手の確認があったこととする旨の文言を記載します。⇒「※送付後一定期間内に連絡がない場合は確認済みとします。」を記載
  • 要件⑤:「頭紙」と呼称する「合計ページ」と前述「要件③」(明細ページ)の組み合わせで1帳票とします。⇒消費税の確定金額は「頭紙」(合計:「計算日(決算日または解約基準適用日)>販売会社」でファンド(要件③のファンド明細部分)を合計する)にて、税込み金額を求め、割り戻しにて1回の計算で消費税額を算出しなければならないため。

上記の要件を満たすようにシステムを構築します。

適格請求書

買手(受託銀行)への交付用帳票を新設します。

  • 要件①:売手(運用会社)の適格請求書発行事業者登録番号を記載します。
  • 要件②:税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)、適用税率、税率ごとに区分した消費税率を記載します。
  • 要件③:運用会社(委託会社)、ファンドごとに1ページの帳票として作成します。

上記の要件を満たすようにシステムを構築します。

 

4.最後に

以上のように、インボイス制度実施に向けて、運用会社のシステム対応に関して粛々と作業を進めています。インボイス制度に関心が少しでもある方は、「国税庁」のホームページにて内容を参照して頂ければと思います。

今回のブログが興味の取っ掛かりになれば幸いです。

 

*1:従来の請求書の記載内容に加え、「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)」を記載した請求書、納品書、領収書などのことを指します。区分記載請求書保存方式はインボイス制度導入までの経過措置であり、軽減税率の発生した2019年10月1日から2023年9月30日まで適用します。

*2:買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載   が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

*3:明確な請求行為(請求書の発行)無しで、「費用」の支払いが行われています。

*4:インボイス制度により、仕入税額控除(還付)の適用を受けるためのインボイス証憑が必要になります。