信用取引における余力管理について

 

皆さんはじめまして。ファイナンシャル・ソリューション開発部の坂東と申します。
今回は、弊社が手掛けている証券ソリューション事業のうち、証券業務(フロント)の余力管理に関わるシステム開発についてご紹介したいと思います。
なお、証券業務の余力管理は多岐に及びますが、今回は信用取引についての余力管理のお話となります。

 

1.信用取引についての余力管理の事業内容

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信用取引における余力管理は「金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」(以下、「内閣府令」と記載します。)に記載されています。
上記の「内閣府令」をシステム化することが、信用取引における余力管理の業務内容となっております。

2.信用取引についての余力管理

先ほどの説明した「内閣府令」で条ごとに説明が分かれていますが、代表的な管理は下記の通りです。
この説明を絵にして分かりやすくしたものが各証券会社のホームページの信用取引に記載されています。(なので今回は絵は用意しません。そちらを見ていただいたほうが分かりやすいです。)

第三条 保証金の額

信用取引を新規建した際に顧客から預託を受けるべき金銭(保証金)の管理について記載されています。
通常は約定価格の30%を保証金に差入する必要があります。

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第六条 保証金代用有価証券

預託を受けるべき金銭(保証金)は現金の他に有価証券をもって代用することができます。この有価証券をもって代用する際の管理について記載されています。
代用価格は預託する日の前日の時価を使用し、株式の場合は代用評価額の80%を超えない額を使用できます。

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第七条 保証金の引出等

保証金の引出する際の管理について記載されています。
信用取引の約定価格の30%は引出できません。受入保証金に残しておく必要があります。

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第八条 受入保証金の総額の計算

受入保証金の管理について記載されています。
保証金から、顧客の負担すべきものの合計額を差し引いたものを受入保証金とします。

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3.システム化にあたっての留意事項

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システム化するにあたっての留意点というか、私が苦労した箇所をいくつか述べておきます。


① 受入保証金の総額計算

前述の説明では顧客の負担すべきものと説明しておりますが、具体的には建玉評価損、建玉決済損、金利、品借料、委託手数料等を指します。
負担すべきものの項目が多く、また、建玉評価益や建玉決済益等、顧客の利益となったものに対する考慮も行う必要があります。

② 現引・現渡(品受・品渡)に対する考慮

信用取引の決済方法は2種類(反対売買による決済、現引・現渡)あり、それぞれ受入保証金への算出条件が異なります。
特に現引・現渡は条件が特殊で、システム内での条件の設定に苦労します。

③ 株式分割に対する考慮

株式分割は簡単に言ってしまうと、株数が増えて単価が下がります。
なので、システムで余力を計算する際には計算に使用している株数はいつ増えるのか?また、単価はいつ下がるのか?というところを意識しないといけません。
また、説明で触れているところですと、保証金代用有価証券は前日の時価を使用し、株数は当日の株数を使用して計算するため、さらにややこしくなります。

※保証金代用有価証券だけではなく、建玉評価損等、同じような考え方をする箇所は他にもあります。
※ここでは株式分割のみ触れていますが、株式併合や株式移転等でも同じような考慮をおこなう必要があります。余力管理では特にそれぞれのケース毎にシステム内の動きを整理する必要がある箇所です。

 

4.終わりに

余力管理について説明させていただきました。私が一番難しかったのは「内閣府令」の解読です。日本語が難しいことを痛感させられます。

今回のお話で少しでも証券業務や余力管理に興味を持っていただければと思います。

文字が多くわかりづらいブログではありますが、最後までご覧いただきありがとうございました。