電子処方箋から考える 高齢者向けUIデザインのポイント

2023年1月から、日本でも電子処方箋が運用開始されました。
電子処方箋は、これまで紙で発行されていた処方箋をデジタルデータに移行するものです。

1.電子化のメリット

これにより、医療機関側は正確な処方・調剤データを参照できるようになります。
さらに、他の医療機関とデータが共有できることで重複投薬や併用禁忌(飲み合わせの問題)が発生する可能性も低下し、患者にも恩恵があります。

2.電子化の懸念材料

一方で電子化による懸念材料もあり、その一つは高齢の患者です。
薬の処方は高齢者のほうが多くなる傾向にありますが、同時にデジタル機器を使いこなしている人の割合が少なくなります。
また、医療関連のシステムは身体的にハンデを負う人も使用することになるため、誰にでも使いやすくする工夫が求められます。

3.UI設計時に参考にすべき点

そういった背景を持つ製品から、参考にすべき点を見ていきたいと思います。

(1) 顔認証付きカードリーダーのUI

では、病院や薬局で見かける顔認証付きカードリーダーのUIを見て、どのような構成になっているかを紐解いてみます。
※画像の使用許可を得る方法が不明だったため、文章のみであることをご容赦ください。

  • 文字は新聞紙の文字サイズより大きい
    文字サイズの適正値は個人の視力に依存するので判断が難しい部分ではありますが、最低でも新聞記事の文字サイズが必要だと考えます。
    これは、新聞紙は高齢者にもなじみ深いという考えに基づきます。

  • 白背景と濃い目の文字色の2色構成(一部反転あり)
    配色は基本的に白地に濃い文字色です。
    色分けによる強調表現は使われていません。
    一部を赤色の文字などで強調したくなりがちですが、色覚障がい者にとって見づらくなることもあるので、不用意に使うのは避けるべきです。
    色覚に限らず障がい者の視点は漏れやすく、注意が必要です。

  • 文章は一般的な日本語のみで表現されている
    IT用語は一切なく、スマホでは当たり前に見る「タッチ」も出てきません。

  • 画面内の文字数:多いもので50文字程度
    行数も長くて5行程度です。

  • 操作は進む選択肢、一部テンキー入力のみ
    画面でのキャンセルや戻る操作はないようです。
    戻る操作は慣れている人には便利であるものの、そうでない人には何をしているかわからなくなることがあります。

  • カードの取り出しでキャンセル
    キャンセルとしての選択肢は、カードの取り出しで可能です。
    間違えたりしたときはとにかくカードを取り出してしまえば解決します。

  • カード取り忘れ通知あり
    完了後のカード取り忘れ時には、画面とアラームで知らせるサポートがあります。
    「うっかりは起こるもの」という前提は重要です。

(2) 優れたUIとは

前述の内容から、優れたUIについてまとめます。

①テキストやアイコンの大きさ、コントラストが十分であること

高齢になると視力の低下が起こります。そのため、文字の大きさの設計はとても重要です。

また、文字色と背景色の色相差や明度差などの視覚的な見やすさを考慮することも必要です。

②明瞭な表現

短く簡潔にすることはもちろんですが、IT用語を避けることでデジタル機器に不慣れな人にも伝わりやすくなることにつながります。

一つ一つの表現に注意が必要です。

③操作の容易さとサポート機能の組み込み

操作できる範囲が不明瞭であったり、何をすればいいのかわからない状況にならないことが重要です。

操作をサポートする機能についても、利用者の立場に立った設計が必要です。

④ハンデを持つ人への考慮

高齢者のみならず、障がい者などのさまざまな人に対して使い勝手のよい構成を考える必要があります。

おわりに

今回はシンプルな製品のUIを見たため、あまり複雑な画面こそ出てきませんでした。
ただ、そもそも複雑な画面の時点で誰にでも使いやすいものになるはずがないので、情報量を必要最小限に絞り込むことがまず第一です。
そのうえで、「優れたUIとは」の内容を押さえた設計であることが重要と考えます。
システムエンジニアの端くれとして、常にこれを念頭に取り組んでいきたく思います。