- デジタル給与とは?基本的な仕組みを解説
- デジタル給与の導入状況と市場動向
- デジタル給与のメリット4選
- デジタル給与のデメリットと注意点
- 【事例紹介】デジタル給与を導入した企業の成功例
- 今後の展望
- この記事を書いた人
こんにちは。デジタルマーケティング部の山内です!
ここ数年、特にコロナ禍以降、現金を使う機会がぐっと減ったという方も多いのではないでしょうか?
私自身もその一人で、友人や同僚との食事の際は、現金ではなく〇〇Payなどのスマホ決済サービスを使うことがほとんどです。なので、現金しか使えないお店に行くと、つい焦ってしまうことも…泣 先日もランチでそんな出来事があり、「もっと電子決済できるお店が増えるといいな」と感じていたところ…なんと、その日に読んでいたIT専門誌でたまたま「デジタル給与」という言葉に出会いました!
「給与までもが電子的に支払われる時代に?」と驚きつつ、「これはもっと知りたい!」という好奇心から、今回の記事では「デジタル給与とは何か?」をテーマに、調べた内容をまとめてみました。
今後の生活に大きく関わるかもしれない話題ですので、普段から電子決済を利用している方はもちろん、現金派の方にも読んでいただけたら嬉しいです。
デジタル給与とは?基本的な仕組みを解説
デジタル給与とは、文字通り、給与を現金や銀行振込ではなく、スマートフォン決済アプリや電子マネーなどのデジタルマネーで受け取る仕組みを指します。正式名称は「資金移動業者の口座への賃金支払」といい、2023年4月1日から厚生労働省の省令改正により、選択肢の一つとして可能になりました。省令が改正されてからまだ2年なんです。
この仕組みでは、企業は従業員へ給与を支払う際、指定された決済サービスを提供する会社の口座(例:〇〇Pay、△△Payなど)へ直接送金します。従業員は、受け取ったデジタルマネーを電子決済に利用したり、ATMなどで現金として引き出したりすることが可能です。つまり、送金は電子マネーで行い、必要であればATMなどで現金を引き出すこともできる仕組みということです。時代は進みますね!笑
【現金給付とデジタル給与のイメージ】
デジタル給与の対象となる決済サービスを提供する会社
2025年6月現在、デジタル給与に対応できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた決済サービスを提供する会社のみです。これは、従業員の給与が確実に保護されるよう、厳格な基準が設けられているためです。指定を受けた決済サービスを提供する会社は、安定したサービス提供のために、安全で強固なクラウド基盤を活用し、安心して送金できる環境を構築しています。
利用者は、この指定された業者の中から、普段使い慣れている電子マネーや電子決済サービスを選ぶことができます。
デジタル給与の導入状況と市場動向
デジタル給与は、日本ではまだ導入が始まったばかりですが、世界に目を向けるとすでに一部の国々で導入が進んでいます。例えばアメリカでは、「ペイロールカード」というデジタル給与の仕組みが使われており、銀行口座を持たない労働者でも給与を受け取れる体制が整っています。
国内では、2025年5月〜6月現在、一部の大手企業や新しい技術を積極的に取り入れている先進企業を中心に、デジタル給与の導入や試験運用が始まっています。導入企業は2~3%とまだまだ少ないですが、今後は、企業の基幹システム、特に人事・給与システムとスムーズに連携できることが重要視され、業務の効率化や従業員の利便性向上を目的として、短期的に導入を検討する企業がさらに増えていくと予想されます。
これに伴い、決済サービスを提供する会社や関連プロバイダーは、企業の基幹システムと決済システムとの連携を強化し、より安全で強固なクラウドベースのサービス提供に力を入れています。
デジタル給与のメリット4選
デジタル給与には、従業員と企業双方にとって多くのメリットがあります。ここでは主な4つのメリットを紹介します。
利便性の向上
給与が直接デジタルマネーで支給されるため、従来の「給与受取→銀行からチャージ→電子決済利用」という複数ステップが不要になります。受け取った給与をそのまま買い物や公共料金の支払いに利用でき、チャージ作業や残高不足の心配もありません。電子決済を頻繁に利用する方にとって、これは大きなメリットですよね。
送金速度の向上
従来の銀行振込では、金融機関の営業時間や処理タイミングに依存し、従業員が実際に給与を受け取れる時間に遅れが生じることがありました。
一方、デジタル給与制度では、リアルタイム決済システムを利用することで、企業が給与支払い処理を行った際の反映時間が大幅に短縮されます。これにより、従業員はより迅速に給与を受け取ることが可能となります。
従業員満足度の向上
給与の受け取り方法が「銀行振込」「電子マネー」「現金」などから選べるようになることで、従業員は自分の生活やニーズに合った方法を選択できるようになります。その結果、働きやすさや満足度の向上が期待できます。
コスト削減と業務効率化(企業側)
企業にとっては、給与支払いに関わるコスト削減と業務効率化の両方を実現できるというメリットがあります。
コスト面では、資金移動業者(電子決済サービス)を利用すれば、一般的な銀行振込よりも送金手数料が低くなるケースが多く見られます。
業務面では、従来は手間のかかっていた給与計算から支払いまでの業務も、デジタル給与の導入により自動化され、人事・経理部門の業務効率が大幅に向上します。また、クラウド型の給与システムと連携することで、これらの業務の自動化・効率化がさらに進み、全体の業務負荷を大きく軽減することも可能です。
デジタル給与のデメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、デジタル給与にはデメリットと注意点も存在します。
デメリット
セキュリティリスク
デジタル給与導入にあたっては、スマートフォンやアプリの紛失・盗難、不正アクセスなどによるセキュリティリスクが懸念されます。セキュリティリスクを回避するためは、強固なパスワード設定や二段階認証の活用が不可欠です。企業の基幹システムや、システムを動かすためのサーバーやサービスを提供する会社(クラウドサービス事業者) 側でも、厳重な情報管理体制が求められます。
注意点(企業側)
従業員への十分な説明と同意
デジタル給与を導入する際は、従業員への十分な説明と同意を得ることが法で定められています。
そのため、企業は従業員に対して仕組み、メリット・デメリット、利用方法、そしてリスクについて十分に説明し、個別の同意を得る必要があります。
残高の上限額
デジタル給与に対応した決済サービスの口座には、上限額として100万円が設定されています。そして、この上限を超える金額については、事前に登録された銀行口座へ自動的に振り込まれる仕組みになっています。そのため、企業の基幹システムでは、従業員ごとの残高管理や振込先への振り分け処理を正確に行うことが求められます。
【事例紹介】デジタル給与を導入した企業の成功例
デジタル給与を導入し、成功した事例をご紹介します。
保険業界
・従業員規模:数千名
・主な業務:保険商品販売・カスタマーサポート
大手損害保険会社では、従業員の希望に応じてデジタル給与サービス「〇〇Pay給与受取」を導入しています。これにより、給与の一部または全部をスマートフォン決済アプリで受け取ることができ、従業員は銀行に行かずに給与を即時利用できるようになりました。さらに、この給与支払いの取り組みは企業側にも価値があります。特に、給与支払いに関わるバックオフィス業務の効率化や人事部門の負担軽減に寄与しています。
通信業界
・従業員規模:数千名
・主な業務:情報通信
大手通信系グループでは、デジタル給与サービス(△△Pay給与受取)をいち早く導入し、従業員がスマートフォン決済アプリで給与を受け取れる仕組みを整備しました。従業員は給料日に銀行へ行く必要がなくなり、電子決済や家族への送金など日常生活の利便性が向上しています。また、従業員の給与受取方法の選択肢が広がった点も、注目されているようです。
今後の展望
省令改正から2年が経過した今、デジタル給与は日本の電子決済普及を後押しする重要な力となりつつあります。将来的には利用できる決済サービスが増え、受け取り方の選択肢もさらに広がるでしょう。しかし、現時点(2025年6月現在)での実際の利用率は2~3%と低いのが現状です。
特に重要な課題として注目されているのが、会社の給与計算システムと、デジタル給与を扱うシステムをスムーズに連携させることです。この連携が進めば、給与の計算から支払い、さらには従業員の経費精算まで、すべてが自動で行えるようになります。そのため、今は多くの企業が、まずこのような便利な「クラウド型の給与管理システム」の導入を検討し始めています。
▼クラウド導入の実例もご紹介していますので、ご関心のある方はぜひご覧ください!
まとめ
ここまでデジタル給与についていろいろ記載してきました!
ここまで読んで、皆さんは現金給与とデジタル給与、どちらが良いと思ったでしょうか。
デジタル給与は2023年の省令改正により実現した、従業員の利便性向上と企業の業務効率化を両立できる新しい仕組みです。現在の利用率は2~3%と低いものの、先に見た通り、着実に導入の成果をあげている企業もあります。今後の普及も期待されますが、その実現には、企業の給与計算システムとの連携が不可欠です。そのため、多くの企業はデジタル給与導入に向けて、まずはシステム連携の準備や対応を進めています。
デジタル給与導入の動きが進む一方で、デジタル給与の普及に対する障害として、現金や銀行口座への信頼も根強く残っています。デジタル給与が社会インフラとして定着するかどうかは、今後の社会的な意識やニーズの変化次第といえそうです。今後の動向に注目ですね!
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この記事を書いた人
名前:山内 恵美
経歴:転職で株式会社シー・エス・エスに入社の2年目。社会人歴はSE6年、マーケティング業務は1年目。
趣味:カフェに行くこと、ドラマを見ること、散歩
予定がないときは、カフェに行って何かしていることが多いです。お気に入りはタリーズです(^^)
会社の近くにタリーズができてほしい!そう願う日も少なくないです笑