皆さんこんにちは。エンタープライズソリューション部の鎌田と申します。
私は社会保険システムにおける開発に携わっております。
今回はその社会保険システムと、実用化が進んでいるマイナンバーの結びつきについて紹介したいと思います。
1.社会保険システムとは
まず、社会保険システムについて、簡単に説明させていただきます。
ここでいう社会保険とは企業内で設立する健康保険組合や、業種毎に集まって作る国民健康保険組合などを指します。
そして社会保険システムとはその組合向けの医療情報システムのことを指します。
社会保険システムの機能としては大きく二点あります。
・組合の加入者を管理する処理(適用処理)
組合に加入する本人・家族の資格の取得・喪失に伴う登録とその管理を行い、ここから種々の申請に伴う登録や、保険料の算出・徴収・収納管理などが行われます。
・診療情報を管理する処理(給付処理)
医療機関で受診した記録を組合毎に集約されたものをデータとして受領し、電算処理、および管理します。ここで高額療養費(一定以上の負担を超越した金額に対し支給するもの)の計算を行います。
また、高額医療費の他、出産育児一時金や付加給付金といった法定給付と呼ばれる支給についても、登録・管理、および支給の処理を行います。
2.マイナンバーのこと
マイナンバーは「国民の利便性の向上」「行政の効率化」「公平・公正な社会の実現」のため、2015年10月より運用が開始されましたが、私たちのところで利用できることといえば、「住民票をコンビニで取得するときに使える」とか「マイナポイントを申し込むと還元される」くらいではないでしょうか?
本来マイナンバーの利用は社会保障・税・災害対策分野の行政手続のみと限定されている所もありますが、利用範囲の拡大も検討されており、将来的にはワンカード化され、色々な申請や手続きが簡単になるかもしれません。
そして今回社会保険においても「オンライン資格確認」が実施され、マイナンバーを有効活用できるようになりました。とはいえ実用性は少ないですが、最初の一歩として今後社会保険でもマイナンバーカードが有効になっていくと思われます。
3.オンライン資格確認とは
オンライン資格確認は2020年10月より実施され、2021年3月下旬よりその実用が始まります。オンライン資格確認ではマイナンバーで集約された情報を取得することにより、受診する医療機関にて資格確認が可能となります。
これによってマイナンバーカードでも医療機関の受診が可能となります。また、健康保険証でも同じ資格確認の可能になります。
逆にいうと、例えば退職などにより資格がなくなってから資格のない健康保険証を提示しても認められない、といった「適正化」が機能することになります。
受診者側からすると、転職などによって健康保険証が発行されていないときに受診することが可能となること、組合側は適正化による運用コストの削減などの効果があります。
社会保険システムとして行われていることは大きく2点あります。
・資格情報の提供
組合に加入している資格情報を厚生労働省が提供している「医療保険者向け中間サーバー」に日々送信します。
・健康保険証の「枝番」を付加
2021年度からの健康保険証ですが、記号番号の後ろに2桁の「枝番」なるものがつくようになります。
その昔、健康保険証は紙でしたが、これは世帯で1枚配布されていたものでした。現在はカード証として1人1枚となっておりますが、カード証自体は「世帯」として管理されているものでした。
オンライン資格確認では個人の資格が必要になることから、記号番号の後ろに2桁の「枝番」を付加することにより、個人を特定することができます。この「枝番」は資格取得の際に社会保険システムからの登録の時に採番しており、中間サーバーへも提供されます。それによってマイナンバーと紐づくことが可能となっております。
4.他のマイナンバーを使った機能について
オンライン資格確認における機能を説明しましたが、他にも社会保険システムとしてマイナンバーを使った機能はあります。
・電子申請
事業所からの加入、育児休暇などによる申請をマイナポータルで電子申請できるようになりました。事業所側としても時間や費用が軽減され、組合側も業務手続、事務コストが軽減されます。
・課税情報の取得
社会保険は、保険料の支払いや、医療費が高額になった場合の高額療養費における限度額など、世帯における所得情報が必要となります。
我々の課税情報はマイナンバーによって「コアシステム」にて管理されているため、「中間サーバー」を経て取得することが可能になりました。課税証明書が提出されない場合など、組合側の業務手続、事務コストが軽減されます。
5.今後のマイナンバーの活用について
オンライン資格確認が運用されますが、今後も機能は増えていくと思います。
社会保険システムでは健康保険証の他、
・「前期高齢受給者証」‥70歳以上の場合、所得によっては負担割合が2割になるため、提示するもの
・「限度額適用認定証」‥高額医療が発生する場合、先に提示することにより、限度額医療の負担は不要となる
・「特定疾病療養受領証」‥人工透析などの特定疾病受療者が提示するもの
がありますが、課税情報を含めたマイナンバーを活用することにより、すべてマイナンバーカード1枚で済むことができるようになるのではと考えております。
社会保険組合で管理していない公費受給者証(自治体から発行)についても同様になると思います。
また、薬剤情報も今後マイナンバーカードで確認できる(2021年10月より)ことから、「お薬手帳」とかも不要になっていくかもしれません。
なお、医療受診情報については個人情報保護法に基づき、マイナンバーカードで確認することができません。(医療費情報は可能です。確定申告に用いることができます)
6.終わりに(おことわり)
社会保険システムに関するマイナンバーとの関連について説明させていただきましたが、開発において、マイナンバー自体を取得することはございません。
マイナンバーについては暗号化されたうえで管理されているため、開発者が知りえることはできません。(開発の際は任意のテストデータを用いております)
今回マイナンバーにおける社会保険システムとしての活用について説明させていただきましたが、マイナンバーカードで今後できることは社会保険以外でもたくさん増えていきます。まだまだ課題も多いですが、正しい理解のもとでマイナンバーを活用していただければと思います。
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